かなばに命を吹き込む、土佐草木花・創造の10年

高知県産の「かなば」をアップサイクルし、命が吹き込まれたように花を咲かせる「土佐草木花(とさそうもっか)」。代表の辻ゆかさんと、フラワーデザイナーの佐藤新子さんを中心に、活動開始から10年を迎えました。

代表・辻ゆかさん(右)、フラワーデザイナー佐藤新子さん(左)

捨てられる素材から生まれる木の花「かなばフラワー」

彼女たちが素材とする「かなば」とは、良質な木材を加工する際に「かんな」で表面を削ることで出る薄い木の層のことです。高知県は森林率全国1位の「木の国」ですが、このかなばは非常に美しいにもかかわらず、これまでは再利用されることなく廃棄されてきました。彼女たちはこの素材を「かなばフラワー」として芸術的な作品へと昇華させ、持続可能なものづくりを体現しています。

かんなで削られて出る「かなば」。これが「木の花」に生まれ変わります。

共通の原動力は「故郷・高知への想い」

「土佐草木花」の活動を支えているのは、単なるビジネス上の戦略ではなく、二人の根底にある「故郷・高知への強い想い」です。東京を拠点に活動する中で、共通の知人を介して出会った二人は、高知の素晴らしい素材がまだ十分に知られていないという思いで意気投合しました。

「高知の良いものを、県外へ、そして多くの人に伝えたい」という共通の目的があったからこそ、10年という歳月を共に歩んでこれたのです。辻さんが企画・プロデュースを行い、佐藤さんがその技術で形にするという信頼関係に基づき、現在は佐藤さん以外にも複数の人々が関わる体制で、小規模な胸章から大規模な空間装飾まで幅広く手掛けています。

東京都で胸章が採用され、小池百合子東京都知事の胸にかなばフラワーが咲いています。(左)、濱田省司高知県知事と大きなかなばフラワーの花束。(中・右)

プロダクトとアートの融合:唯一無二の製品作り

かなばフラワーの最大の特徴は、量産可能な「製品」でありながら、手作りの一点ものという「アート」の側面を併せ持つ点にあります。これは、単なる個人の表現としてのクラフトとは異なり、ビジネスとして成立する強固な再現性を備えています。

一方で、素材となる「かなば」は、ヒノキの白、スギの茶色、ケヤキの黄色など、木目も模様も一枚として同じものは存在しません。そこに土佐和紙を組み合わせることで、完成した花は一つひとつ異なる表情を宿します。この「製品としての安定性」と「天然素材ゆえの希少性」の両立こそが、土佐草木花の強みです。

始まりは胸章から

インタビュアー: お二人の活動のきっかけと、最初の作品について教えてください。

辻さん: 実は、私が「かなばで胸章(徽章)を作りたい」というアイデアを持ち、半年ほど試作を重ねていた時に、知人から「高知の人だから」と紹介されたのが佐藤さんでした。最初から特定のアクセサリーを作ろうとしたわけではなく、ビジネスとして成立する「製品」を作りたいという明確な目的がありました。

佐藤さん: 紹介を受けて辻さんと出会い、高知への思いで意気投合して制作に加わることになりました。最初は本当に小さな胸章からのスタートでしたが、そこでの出会いが土佐草木花の大きな転換点となりました。

10年目の現在と、これからの展望

インタビュアー: 10年という節目を迎え、活動に変化はありましたか?

佐藤さん: 以前は小さな作品が中心でしたが、最近では東京プリンスホテルでの大規模な空間装飾など、二人で1ヶ月以上かけて作り上げるような大作も増えています。「枯れないけれど天然の素材ゆえの自然の生命を感じる」こと、そして年月と共に深まる木の色合いを楽しめるのが私たちの強みです。

辻さん: 10年目というタイミングで、ご提案をいただいたのが「時計」のプロジェクトです。花に実用性を加えたいと考えていた矢先のお話で、現在は生活に溶け込む新たなプロダクトとして開発を進めています。

インタビュアー: 次の10年に向けたビジョンを教えてください。

辻さん: 空港やホテルなど、公共空間の装飾をさらに広げていきたいです。高知の豊かな木を感じられる「かなばフラワー」という新しい選択肢を提案し続けたいですね。

佐藤さん: 木は一度伐採されると命が終わりますが、私たちの手で花にすることで、もう一度瑞々しい命が宿ったような表現を目指したい。これからも仲間たちと共に、楽しみながら新しい挑戦を続けていきたいです。

花びらとなるかなばと和紙を貼り合わせる仕込みに一番手がかかるそう。(左)はなびら一枚一枚が佐藤さんの手にかかるとみるみる咲き誇ります。(中)
新作のひまわりの花。最後にバランスを考えながら調整していきます。(右)


公式ウェブサイト 土佐草木花
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